The Maerklin Chuff-Chuff Club of Nagoya
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サロンカー

書籍紹介

新刊ではなく、初版発行は2009(平成21)年のやや古い本で、読まれた方も多いかもしれません。何年か前に購入してチョイ読みした後、積ん読状態だったものを読み返したら、ドイツ蒸気機関車に関する説明が興味深かったのでご紹介します。 内容(目次) は上の写真を参照下さい。 Märklinファンは、なによりドイツ蒸気機関車マンセーであり、なかでも01形の大ファンである場合が多いと思います。この本でもBR01が触れられており、絶賛されているかと思って読んでいたら、その逆で、BR01でドイツ蒸気機関車の技術的発達が止まったということです。BR01が悪いわけではなく、悪いのはこの時の開発環境・技術リーダーですが。それがこの本を紹介しようと思った動機です。 目次に「蒸気機関車の世界史」とあるように、SLの技術的発達は海外が中心であり、各技術的内容毎に、各国毎に説明されていて、かつ難しすぎないのが本書の特徴でしょうか。表紙の写真も日本のSLでなく筆者撮影の南ア蒸機の重連というところがユニークです。 内容をすべて紹介できませんが、ドイツSLで言及されているのは、P8形、05形、S2/6形、S3/6形、01形、61形、01.10形、03.10形、10形。 で、読んでBR01に関し驚いたのは以下の通りです。 1920年のドイツの国有化以前、各州ごとの鉄道運営時代は、急行用SLの99％が3気筒以上、85％が4気筒で、2気筒車は1％に満たなかったそうです。すごいですね。各鉄道会社とタッグを組んだメーカーが設計実務を担当し、高い技術力を競っていた。しかし、ドイツ国鉄への統合時に、北ドイツをおさえていたプロイセンが鉄道の主導権を握り、そこに吸収された形となった。北ドイツは広大な平原で勾配が少なく、さほどパワーを要せず、辺境の現場は単純な構造を好む傾向にあった。これが1925年最初の制式SLであるBR01が、英仏や従来のドイツ各州の技術的潮流に逆らって2気筒シンプル機構となり、ドイツSLの進化を止めてしまったという。ちなみに、それを推進したのは機関車計画室長のリチャード・パウル・ワグナー。ワグナーの計画では2500馬力だったところ2240馬力以下で、水平区間110km/hで800トンを牽引する計画が430トンしか牽けず、世界のSL技術レベルに比し凡作に過ぎなかったとのこと。 ご存じの方は多いのかもしれませんが、栄光のSLと思っていたBR01が「凡作」だったというのは初めて知りました。優れたSLを生んだメーカー各社の高い技術力をまとめるリーダーが存在しなかったことと、競争がなくなったことが原因とのことです。その後、1939年に3気筒のBR01.10が登場したが、経験不足と技術不足により劇的な性能向上とはならず、第二次世界大戦に突入してしまい、ドイツSLの技術向上が開花しないまま終わった。著者の結論は、「タービン機関車、高圧機関車、小型蒸気機関による高速回転とギア駆動、各軸分散駆動方式など多彩な新技術を模索しながらも、実用上では最も平凡な選択肢のみしか実現できなかったことはドイツ機関車史にとって残念なことである」だそうです。 ということで、BR01・BR01.10のファンである私にはショックな内容でしたが、逆にイギリス・フランス・アメリカのSLの高い技術も知ることができ、DBのSL一辺倒ではなく、LNERやSNCFやUPのSLにも興味がわいて、それらのSL模型を購入する動機(言い訳)となりました。 著　者：齊藤　晃 ページ：227 発行所：成山堂書店 発　行：2009年1月28日　初版 ISBN978-4-425-76161-6

（2025/01/26 written by H.INOUE）